トラウマと言う言葉は、最近テレビやメディアなどでもよく見たり聞いたりする様になり、日常語の一つとして定着した印象もあります。若い方たちの間では、「なにかのきっかけ以来、ずっと嫌な印象が残っている」という位の意味合いでもよく使われている言葉のようです。

トラウマ(trauma)とは、元々は「外傷(ケガ、またはケガによって出来た傷のこと)」を指すギリシア語でしたが、フロイトの『精神分析入門』などで、「強い衝撃的な出来事が精神的にショックを与え、後遺症のように心の傷を残す」という状態を「トラウマ」と表現するようになります。以降、トラウマという言葉は「心的外傷」という意味で広く用いられるようになりました。

このような精神的な強いショック、トラウマを受けたことが原因となって、他の人にはわかりにくい様々な症状を抱えてしまうことがあり、「PTSD」(心的外傷後ストレス障害、Post Traumatic Stress Disorder)と呼ばれています。

この「PTSD」という言葉が日本で注目を浴びるようになったのは、阪神大震災などの大きな災害のあと、被災された方々の支援を行う中での心のケアの重要性が認識されたことなどが契機であるとも言われていますが、実際にはPTSDは日常でも起こるような様々なことが原因となって引き起こされることがわかってきました。

実は、トラウマというのは、これまで考えられていたよりもずっとありふれたものであることがわかってきています。

一般的にトラウマとされている戦争体験やレイプ、子ども時代の虐待や、地震や洪水などの自然災害以外にも、トラウマを引き起こす要因はたくさんあります。

例えば、次のようなものもトラウマの原因になりえます。

  • 交通事故
  • 高いところや階段からの落下
  • あらゆる種類のけが
  • 重い病気
  • 手術など病院での処置や歯医者での処置
  • 困難な出産
  • 愛する人を突然失うこと
  • 上のような場面に居合わせたり、遭遇すること
  • 映画、物語などでの恐怖の体験
  • 社会的・仕事・学業上での失敗や、ピンチの経験による高い緊張・ストレス状態
  • その他、詳細が不明の体験(本人の記憶に全くないようなストレス、トラウマ)

などです。PTSDの前提として「実際の死や重傷、あるいはその恐れがある出来事、または自分や他人の身体的統合がおびやかされる危険を体験したり、目撃したり、直面したりした」(DSM-Ⅳ)とありますが、これらは「主観的なもの」、つまり、「自分にとってそれが恐怖や脅威であった」ことが重要なのです。他人からの判断や見た目で決められるものではありません。
「こんなことは大した事ではない」という、しきたりや慣習、社会的なしがらみ、いつの間にか植え込まれた観念などに、人はいつの間にかとらわれて、自分自身の本当の気持ちや感情を見失ってしまうこともあります。また、トラウマ反応自体が自分の感じた恐怖を抑圧してしまうこともあります。

「こんなことで悩んだりしている自分が弱いんだ」などと思うことはありません。
「今この場所が安全であること」をしっかりと確かめながら、「今、自分の体や心が何を感じているのか」を少しだけ見てみることから、SEによるトラウマの治療は始まります。